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大都会もいいけど、どこへ入っても人の波。人の顔、 耳元でしゃべりまくる声。 やたら人の渦に飲み込まれてしまう。 最近やけに混沌と喧騒がすぎて 何やら落ち着かなくなった。 むかし、亀井勝一郎という人が書いてたっけ。 「雑踏の人の中をかきわけ、歩いていると、ひとり孤独を感じる」と。 「孤独感を感じたいがために雑踏の中に身を沈めた」と。 やはり自分を見失いたくないんだな。 亀井さんは、哲学者で評論家としても第一級の人だった。 「生死の思索―歎異抄のこころ」 「大和古寺風物誌 」など多くの著書を残している。 おれはその人に心酔した一時期があった。 彼はよく京都や奈良を歩きまわって、自然、風物や仏像と対峙し、 その時の心境を著述している。 それを岩波文庫が擦り切れるほど愛読していたおれは、 古本屋に在庫の本をすべて売りはらって旅費を調達した。 東京駅発最終の夜行鈍行列車に乗れば京都に早朝に着く。 なけなしの財布の底をはたき、食べるものも節約して、 よく奈良の寺院や街を隅々まで目的もなくひたすら歩いたっけ。 見るもの、聴くものすべてが心の中をずいっと突き抜けて、 腑抜けだったおれの背筋を正してくれた。 奈良の街もよかった。 朽ちかけた土塀の細い道に赤い椿の花が点々と落ちて 残り香を放っていたっけ。 寺院の中に入り仏像と対峙すると不思議に心が落ち着きやすまる。 おのれを「無」にすることができた 静寂が身にしみていつまでも立ち去り難かった。
by ikkyuan
| 2006-04-06 22:31
| 評論家 亀井勝一郎
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